「親から相続した実家を売ろうと思うけれど、税金はいくらかかるんだろう」
「3,000万円特別控除っていう制度を聞いたけど、自分も使えるの?」
「思ったより税金が高くて、売却を決めかねている」
実家(相続不動産)を売却するとき、譲渡所得税という税金がかかります。
ただし、いくつかの特例制度を使えば、税金を大幅に減らせる、場合によってはゼロにできる可能性があります。
この記事では、相続した実家を売却したときの税金の仕組みと、使える特例について、具体的なシミュレーション付きで解説します。
税務情報の前提: 本記事は2026年5月時点の制度に基づきます。税法は改正が頻繁にあるため、実際の売却時には必ず税理士または税務署にご確認ください。
この記事でわかること
- 実家を売ったときにかかる税金の種類と税率
- 「3,000万円特別控除(相続空き家特例)」の使い方
- 自分のケースで使える特例の判定方法
- 3パターンのシミュレーション(築年数別・地域別・相続後年数別)
- 申告のタイミングと注意点
まず、税金の話に入る前に
税金の話は数字が多く、読んでいて気が重くなる方もいると思います。
ですが、この記事を最後まで読んでいただければ、「自分のケースで税金がいくらかかるか」のおおよその目安は掴めます。
焦らず、ご自身に関係する部分だけ拾い読みする感覚で進めてみてください。
実家を売ったときにかかる税金
不動産を売って利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、所得税と住民税の合計で構成されています。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除
- 売却価額: 売れた金額
- 取得費: 親が買った値段(または相続時の評価額)+ 建物の減価償却を考慮
- 譲渡費用: 不動産仲介手数料、印紙税、解体費用、測量費用等
- 特別控除: 該当する特例(後述)
譲渡所得税の税率
不動産の所有期間によって税率が大きく変わります。
| 所有期間 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡) | 39.63% |
| 5年超(長期譲渡) | 20.315% |
重要: 相続した不動産の場合、親(被相続人)が取得した日から計算します。
つまり、親が10年以上前に取得していれば、相続後すぐ売っても長期譲渡(20.315%)が適用されます。
「3,000万円特別控除(相続空き家特例)」とは
相続した実家を売却するときに、特に大きな影響を持つのが相続空き家の3,000万円特別控除です。
概要
- 相続で取得した空き家を売却したとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる
- 譲渡所得が3,000万円以下なら、税金がゼロになる
- 相続人が3人以上の場合は、特例適用に追加要件あり
使うための主な条件
すべて満たす必要があります。
-
昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家屋
建築基準法の旧耐震基準で建てられた家が対象 -
相続開始(親の死亡)直前に親が一人暮らししていた
親と同居していた家族がいた場合は対象外 -
相続後、空き家のままだった
人に貸したり別の用途に使ったりしていない -
以下のいずれかで売却
- (A) 耐震改修して家屋ごと売却(令和元年4月1日〜令和9年12月31日まで)
- (B) 家屋を取り壊して土地として売却
-
(C) 譲渡日の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊し(令和6年1月1日以降の譲渡に追加された選択肢)
-
売却価額が1億円以下
高額物件は対象外 -
相続開始日から3年経過する日の属する年の12月31日までに売却
親が2026年5月に亡くなった場合、2029年12月31日までに売却 -
適用期限: 令和9年(2027年)12月31日までの譲渡
これら全てを満たした上で、確定申告で特例を申請する必要があります。
注意: 自宅(マイホーム)の3,000万円控除とは別制度
「3,000万円特別控除」と聞くと、ご自身がお住まいだった家を売ったときに使えるマイホーム特例(居住用財産の3,000万円特別控除)を想像する方が多いです。
しかし、相続した実家はあなたの「居住用」ではないため、マイホーム特例は使えません。
代わりに、上記の「相続空き家の3,000万円特別控除」を検討することになります。
ケース別シミュレーション
実際にどれくらい税金がかかるか、3パターンで試算してみます。
ケース1: 築40年・地方戸建て・相続後1年で売却
- 売却価額: 800万円
- 取得費: 不明(親の購入時記録なし)→ 売却価額の5%(40万円)で計算
- 譲渡費用: 仲介手数料28万円+解体費用150万円 = 178万円
- 譲渡所得 = 800 – (40 + 178) = 582万円
3,000万円特別控除が使える場合(築年数・要件OK)
譲渡所得582万円 – 3,000万円 = マイナス → 税金ゼロ
特別控除が使えない場合(築年数や条件NG)
譲渡所得582万円 × 20.315% = 約118万円の税金
ケース2: 築20年・都市近郊・相続後2年で売却
- 売却価額: 3,500万円
- 取得費: 親の購入時記録あり 2,000万円(減価償却後)
- 譲渡費用: 仲介手数料113万円
- 譲渡所得 = 3,500 – (2,000 + 113) = 1,387万円
3,000万円特別控除は使えない(築20年=1981年5月以降の建築なので対象外)
譲渡所得1,387万円 × 20.315% = 約282万円の税金
ケース3: 築50年・地方戸建て・取得費不明・解体して土地売却
- 売却価額: 600万円
- 取得費: 不明 → 売却価額の5%(30万円)で計算
- 譲渡費用: 仲介手数料23万円+解体費用180万円 = 203万円
- 譲渡所得 = 600 – (30 + 203) = 367万円
3,000万円特別控除を適用
譲渡所得367万円 – 3,000万円 = マイナス → 税金ゼロ
取得費が分からない場合
「親が何年前に、いくらで買ったのか分からない」というケースは非常に多いです。
対応方法
方法1: 売却価額の5%で計算(概算取得費)
取得費の証明書類がない場合、売却価額の5%を取得費とできます。
ただし、実際の取得費より低くなることが多く、譲渡所得が大きくなる傾向。
方法2: 当時の地価データから推計
購入年が分かっていれば、当時の公示地価や近隣の取引事例から推計する方法もあります。
税理士に相談すると、合理的な推計を作成してくれる場合があります。
方法3: 親の家計簿・通帳・契約書を探す
意外と見つかるのが、親が買ったときの契約書や領収書。
仏壇の引き出し、押し入れの古いファイル、銀行の貸金庫等を一度確認してみてください。
確定申告のタイミング
不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日の確定申告期間中に申告します。
必要書類
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書(購入時・売却時)
- 仲介手数料の領収書
- 解体費用・測量費用の領収書
- 戸籍謄本(相続関係を証明)
- 被相続人の住民票の除票
- 相続空き家特例の確認書(市町村役場で発行)
- 耐震基準適合証明書(耐震改修した場合)
特に「相続空き家特例の確認書」は、売却前に市町村役場に申請して発行してもらう必要があります。
事前準備が大切です。
税理士に依頼するか、自分で申告するか
税理士に依頼するメリット
- 特例の適用判定が確実
- 確定申告書の作成が正確
- 税務署とのやりとりを代行してくれる
- 費用は10〜30万円程度
自分で申告するメリット
- 費用がかからない
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーが使いやすくなった
- ただし、特例適用の判断は自己責任
3,000万円特別控除のような大きな特例を使う場合、依頼料を払っても税理士に頼むほうが安全です。
特に取得費が不明・要件判定が微妙なケースでは、税理士への依頼を強くおすすめします。
まとめ
実家を売ったときの税金は、特例を使えるかどうかで大きく変わります。
- 譲渡所得税は所得税+住民税で20.315%(長期譲渡の場合)
- 相続不動産の所有期間は親の取得時から計算
- 「相続空き家の3,000万円特別控除」が使えれば、税金ゼロも可能
- 適用条件は厳しい(1981年5月以前築・空き家・1億円以下・3年以内・2027年12月までの売却)
- 取得費が分からないと税金が高くなりがち
「自分のケースで税金がいくらか」は、不動産一括査定の概算売却価額をベースに試算できます。
正確な判断のためには、税理士の初回相談(無料〜1時間1万円程度)が確実です。

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