親が老人ホームや介護施設に入ったあと、誰も住まなくなった実家。
「処分するかどうか、まだ親が生きているのに考えるのは気が引ける」
「でも、月々の維持費もかかるし、放っておくと家が傷む」
そんなふうに、行き場のない気持ちを抱えている方は少なくありません。
この記事では、親が施設に入った後の空き家について、現実的にとれる5つの選択肢と、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
「すぐに決めなくていい」というスタンスで、ご自身に合う方向を一緒に考えていきましょう。
この記事でわかること
- 親が施設に入った後の空き家でかかる本当のコスト
- 5つの選択肢(売る/貸す/残す/活用/解体)それぞれの特徴
- 親がご存命のうちにできる手続きと、難しいこと
- 兄弟姉妹がいる場合の話し合いのコツ
- 「いつまでに決めるべきか」の現実的な目安
まず知っておきたい、空き家の年間コスト
決断の前に、空き家を維持するとどれくらいお金がかかるか、ざっと把握しておきましょう。
| 項目 | 年間目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 5〜15万円 |
| 火災保険・地震保険 | 2〜5万円 |
| 電気・水道の基本料金 | 2〜3万円 |
| 庭木・庭の手入れ | 2〜10万円 |
| 帰省・管理のための交通費 | 5〜20万円 |
| 合計目安 | 16〜53万円/年 |
地方の戸建ては固定資産税が比較的低い一方、遠方からの管理費(交通費)がかさみがちです。
年間20万円台が一つの相場と考えてよいでしょう。
加えて、特定空家に指定されると固定資産税が最大6倍になる制度があります。
庭木が伸び放題、家が傷んできた、といった状態を放置するとリスクが上がります。
まず、ひと息ついてください
ここから5つの選択肢を見ていきますが、その前に一つだけ。
親がまだ生きていて、けれど実家は空き家。
このタイミングで「処分」という言葉を使うのは、本当に重たいことです。
ご自身を責める必要はありません。
親の家のこれからを考えること自体、「親のこと」を大切に思っているからこその行動です。
ここから先は「今すぐ決めること」ではなく、「いつか決めるための材料を集めるつもり」で読んでみてください。
選択肢1: 残す(=現状維持)
「親がまだ生きているのに売却するのは気が引ける」
「親が施設から戻ってくる可能性もある」
「思い出のある家を簡単に手放したくない」
そんな気持ちから、まずは現状維持を選ぶ方は多いです。
メリット
- 親に売却・処分の話を切り出さなくて済む
- 思い出を残せる
- 親が戻ってくる可能性に備えられる
デメリット
- 年間20〜50万円の維持費がかかり続ける
- 家が傷む(空き家は人が住まないと急速に劣化する)
- 「特定空家」リスク
残す場合にやっておきたいこと
- 月1回の換気・通水(難しければ空き家管理サービス 月3,000〜10,000円)
- 庭木の年1〜2回の手入れ
- 火災保険の継続確認(空き家になると保険料が上がる場合あり)
「いずれ判断するけれど、今は残す」という選択は何も悪いことではありません。
ただし、判断を先送りにしている自覚は持っておくことが、後で慌てない秘訣です。
選択肢2: 貸す(賃貸活用)
親が施設から戻る可能性が低く、かつ家がまだ住める状態であれば、賃貸として人に貸す選択肢があります。
メリット
- 月々の家賃収入が入る(地方戸建てで4〜8万円/月が目安)
- 人が住むことで家が傷みにくい
- 固定資産税等が経費計上できる
デメリット
- リフォーム費用が初期にかかる(数十万〜数百万円)
- 入居者トラブルの可能性
- 退去後の原状回復・空室期間のリスク
- 売却に切り替える際に手間が増える
親がご存命のうちに貸す場合の注意
- 親本人の同意が必須(賃貸借契約の主体が親のため)
- 親が認知症等で判断能力が低下している場合は、成年後見人または家族信託の手続きが必要
- 家賃収入は親の収入となり、施設費の自己負担増・介護保険料の段階に影響する可能性
賃貸を検討する場合は、まず近くの不動産会社に「賃貸として貸し出した場合、月いくらで貸せそうか」のヒアリングから始めるのがおすすめです。
選択肢3: 売却する
施設に入って戻る予定がなく、維持コストも避けたい場合は、売却が現実的な選択肢になります。
メリット
- 維持費がゼロになる
- まとまった現金が入る(施設費に充てられる)
- 兄弟間の相続トラブルの種を一つ減らせる
デメリット
- 心理的なハードルが高い(思い出を手放す)
- 地方の戸建ては買い手がつくまで時間がかかる(半年〜数年)
- 親本人の意思確認・売買契約への関与が必要
親がご存命のうちに売却する場合の必須条件
親本人が売却に同意し、契約手続きに参加できる状態であることが大前提です。
判断能力が低下している場合は、以下のいずれかが必要になります。
- 成年後見制度の利用(家庭裁判所への申立て・後見人選任で数ヶ月)
- 家族信託の設定(認知症の進行前にしか設定できない)
「親が元気なうちに、いざという時のために家族信託を結んでおく」という選択肢があることを覚えておくと、後の選択肢が広がります。
売却の進め方(遠方在住者向け)
- 不動産一括査定で複数社から査定を取る(オンラインで完結)
- 査定額が高すぎる業者は要注意(後で値下げ圧力)
- 中央値の3社に絞り、現地確認・媒介契約
- 売り出し価格は査定額の8〜9割で設定すると動きやすい
- 内見対応は不動産会社に一任(遠方からでも可)
選択肢4: 活用する(空き家バンク・民泊・サブスク住宅等)
近年は、売らずに「使ってもらう」選択肢も増えています。
空き家バンク
- 自治体が運営する空き家マッチングサービス
- 利用料はほぼ無料
- ただし、買い手・借り手がつくまで時間がかかる(年単位)
民泊・地域滞在型サブスク
- Airbnb等で短期賃貸として活用
- 地方は登録ハードルが低いが、運営代行が必要
- 月数万円〜の収入になる場合あり
地域貢献型(コミュニティスペース・移住者シェアハウス等)
- NPO・地域団体と連携
- 収益性は低いが、地域とのつながりを保てる
「活用」を選ぶ場合の現実
活用は理念的に魅力的ですが、「収益が安定しない」「運営に手間がかかる」のが正直なところです。
遠方在住で本業がある方の場合、運営代行サービスを使うか、ハードルが低い空き家バンク登録から始めるのが現実的です。
選択肢5: 解体する
家が傷みすぎている、土地だけ売却したい、特定空家リスクを避けたい、といった場合は解体も選択肢です。
メリット
- 「特定空家」リスクが消える
- 土地として売りやすくなる場合がある
- 火災・倒壊リスクがゼロになる
デメリット
- 解体費用が100〜300万円かかる(木造30坪の場合)
- 解体後は固定資産税が高くなる(住宅用地特例が外れる)
- 土地が売れない場合、固定資産税負担が増えるだけになる可能性
解体を検討する条件
解体が向くのは、以下のような場合に限られます。
- 家屋がかなり傷んでいる(リフォームでは住めるレベルにならない)
- 土地として売却見込みがある(立地が良い、買い手がつきやすい)
- 自治体の解体補助金が使える(条件・上限あり)
- 親がご存命でも、本人の意思確認が取れている
「とりあえず解体」は基本的にNG。
土地が売れる見込みを先に確認してから、解体の判断をしてください。
兄弟姉妹がいる場合の話し合い
実家は将来的に相続財産になります。
親がご存命のうちでも、兄弟姉妹との「方向性の共有」だけは早めに始めておきましょう。
話し合うべき4つのこと
- 方向性(売る・貸す・残すの大枠)
- 窓口役(誰が業者対応や手続きを担うか)
- 費用負担(維持費・解体費・売却益の分配)
- 判断のタイミング(いつまでに何を決めるか)
最初から完璧に決めようとせず、「とりあえずの方向性」だけを揃えるのがコツです。
LINEグループで情報共有していけば、顔を合わせなくても進められます。
いつまでに決めればいい?
絶対的な期限はありません。が、現実的には以下のタイミングで判断材料が揃いやすいです。
- 親が施設入居から半年〜1年: 戻る可能性が低いことが見えてくる
- 空き家にして1〜2年: 家の劣化が見えてくる、維持費の重さを実感
- 特定空家指定の警告が出たら: その時が決断のタイミング
「とりあえず1年は様子を見て、その間に情報だけ集めておく」というスタンスで十分です。
まとめ
親が施設に入った後の空き家には、5つの選択肢があります。
- 残す(=現状維持)
- 貸す(賃貸活用)
- 売却する
- 活用する(空き家バンク・民泊等)
- 解体する
どの選択肢も正解で、どの選択肢も間違いではありません。
大切なのは「焦らず、情報を集めながら、ご自身と家族のペースで決めていく」こと。
まずは年間維持費の試算と、不動産の査定額の把握から始めてみてください。
数字が見えると、判断がしやすくなります。

コメント