「親の介護がはじまったけど、月いくらかかるんだろう」
「在宅介護と施設入所、どっちが安い?」
「貯金がいくらあれば、老後の介護は乗り切れるの?」
介護費用は、家族の家計を直撃する最重要トピックです。
それなのに、はじまるまで具体的な金額が見えない。
「親の年金で足りるのか」「子世代がいくら負担することになるのか」、不安だけ募りやすい領域です。
この記事では、在宅・施設・要介護度別に、介護費用の現実的な金額を整理します。
この記事でわかること
- 介護費用の全国平均(月額・総額)
- 要介護度別の費用の目安
- 在宅介護と施設入所の費用比較
- 介護費用を抑える5つの工夫
- 家計が苦しいときの公的支援
介護費用の全体像
まず、全国平均から押さえます。
生命保険文化センターの調査では、介護にかかる費用は以下のとおりです。
月額の平均
- 在宅介護: 月4.8万円
- 施設介護: 月12.2万円
- 全体平均: 月8.3万円
介護期間の平均
- 平均介護期間: 5年1ヶ月(61ヶ月)
- 最も多い回答: 4〜10年
介護費用の総額(平均)
- 一時費用(住宅改修、福祉用具購入など): 約74万円
- 月額費用 × 平均期間 = 約506万円
- 合計: 約580万円
これが「介護にかかる平均的なお金」のサイズ感です。
ただし、要介護度・在宅か施設か・地域によって大きく変動します。
要介護度別の費用目安(在宅介護)
要介護度ごとに、必要なサービス量が変わります。
以下は在宅介護で介護保険サービスを利用した場合の月額目安(自己負担1割の場合)です。
要支援1: 月1〜2万円
- 介護保険利用限度額: 約5.0万円
- 主なサービス: 週1回の訪問介護、デイサービス
- 自己負担(1割): 約5,000円
- その他費用(おむつ、配食など): 約1万円
要支援2: 月2〜3万円
- 介護保険利用限度額: 約10.5万円
- 主なサービス: 週2回程度のサービス
- 自己負担(1割): 約1万円
- その他費用: 約1.5万円
要介護1: 月3〜5万円
- 介護保険利用限度額: 約16.7万円
- 主なサービス: 週3回のサービス、福祉用具レンタル
- 自己負担(1割): 約1.6万円
- その他費用: 約2万円
要介護2: 月4〜6万円
- 介護保険利用限度額: 約19.7万円
- 主なサービス: 週3〜4回のサービス
- 自己負担(1割): 約2万円
- その他費用: 約2.5万円
要介護3: 月6〜8万円
- 介護保険利用限度額: 約27.0万円
- 主なサービス: ほぼ毎日のサービス、ショートステイ
- 自己負担(1割): 約2.7万円
- その他費用: 約3万円
- おむつ・医療費が増える
要介護4: 月7〜10万円
- 介護保険利用限度額: 約30.9万円
- 主なサービス: 毎日のサービス、訪問看護
- 自己負担(1割): 約3万円
- その他費用: 約4万円
- 医療費・福祉用具レンタル増
要介護5: 月8〜12万円
- 介護保険利用限度額: 約36.2万円
- 主なサービス: 24時間体制に近い
- 自己負担(1割): 約3.6万円
- その他費用: 約5万円
- ベッド上の生活、医療依存度高
なお、所得が一定以上の場合、自己負担は2割または3割になります。
現役並み所得(年金収入340万円以上など)の場合は、上記の2〜3倍を想定してください。
施設介護の費用目安
施設に入所する場合、月額費用は施設種別で大きく変わります。
特別養護老人ホーム(特養): 月8〜13万円
- 入居一時金: 0円
- 月額費用: 8〜13万円(居住費・食費・介護サービス費)
- 対象: 要介護3以上
- 公的施設で割安だが、入所待ちが長い
介護老人保健施設(老健): 月8〜14万円
- 入居一時金: 0円
- 月額費用: 8〜14万円
- 対象: 要介護1以上
- リハビリ目的、原則3〜6ヶ月
グループホーム(認知症対応): 月12〜18万円
- 入居一時金: 0円〜数十万円
- 月額費用: 12〜18万円
- 対象: 要支援2以上、認知症診断あり
- 小規模・家庭的雰囲気
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住): 月12〜25万円
- 入居一時金: 0円〜数百万円
- 月額費用: 12〜25万円
- 対象: 自立〜要介護
- 介護サービスは外部利用
介護付き有料老人ホーム: 月15〜30万円
- 入居一時金: 0円〜数千万円
- 月額費用: 15〜30万円
- 対象: 自立〜要介護
- 施設内で介護完結
住宅型有料老人ホーム: 月12〜25万円
- 入居一時金: 0円〜数百万円
- 月額費用: 12〜25万円
- 対象: 自立〜軽度要介護
- 介護サービスは外部利用
入居一時金が高い施設(数千万円)は、月額費用が抑えられる傾向があります。
家族の貯金額・親の年金額・残りの介護期間予測で、トータルコストを比較してください。
在宅介護と施設介護、どちらが安いか
「在宅のほうが安い」は、半分正解で半分不正確です。
在宅介護が安く見える理由
- 月額: 在宅4.8万円 vs 施設12.2万円
- 家賃・食費が親の自宅だから不要
- 一部のサービスを家族が代行できる
在宅介護に隠れたコスト
- 家族の介護離職(年収300万円なら年300万円の機会損失)
- 家族の介護用品・交通費
- 親の家の修繕費(バリアフリー改修)
- 家族の精神的疲弊(医療費・カウンセリング費用)
施設介護のメリット
- 家族の時間的拘束が減る
- 介護のプロに任せられる
- 緊急時の対応が早い
- 家族の関係性が悪化しにくい
「在宅は安い」と思って始めたが、家族の負担で限界が来て施設に切り替えるケースは非常に多いです。
最初から両方の選択肢を視野に入れて、計算したほうが冷静に判断できます。
介護費用を抑える5つの工夫
公的制度をフル活用すれば、自己負担を大きく減らせます。
工夫1: 高額介護サービス費制度
月の自己負担額が上限を超えた分は、申請すれば返ってきます。
- 一般所得世帯(住民税課税): 月44,400円が上限
- 住民税非課税世帯: 月24,600円が上限
- 生活保護等: 月15,000円が上限
申請は市区町村の介護保険窓口へ。
一度申請すれば、以降は自動的に超過分が振り込まれます。
工夫2: 高額医療・高額介護合算制度
医療費と介護費の合計が一定額を超えると、超過分が払い戻されます。
- 70歳以上・一般所得世帯: 年56万円が上限
- 70歳以上・住民税非課税世帯: 年31万円が上限
医療費と介護費が両方かかっている家庭は、必ずチェックすべき制度です。
工夫3: 医療費控除
介護サービスの一部、おむつ代、訪問看護代などは医療費控除の対象になります。
年間10万円を超えた医療費は、確定申告で還付されます。
- 訪問看護の費用
- 訪問リハビリの費用
- 通所リハビリの費用
- 短期入所療養介護の費用
- 医師が必要と認めたおむつ代
確定申告で「医療費控除の明細書」に記載するだけです。
工夫4: 介護保険の負担限度額認定
施設入所時の居住費・食費を軽減できる制度です。
- 住民税非課税世帯が対象
- 申請すれば、居住費・食費が大幅減額
- 特養・老健・ショートステイで適用
世帯分離(親と子の世帯を分ける)をすれば、所得計算が親単独になり、認定を受けやすくなるケースもあります。
工夫5: 福祉用具レンタルと住宅改修助成
買うより借りるが圧倒的に安いです。
- 福祉用具レンタル: 月数百〜数千円で介護ベッド、車椅子、手すりなど
- 住宅改修費: 上限20万円(自己負担1〜3割)で手すり設置、段差解消など
ケアマネに相談すれば、必要な福祉用具・住宅改修を提案してくれます。
家計が苦しいときの公的支援
それでも介護費用が払えないとき、相談できる窓口があります。
生活福祉資金貸付制度
社会福祉協議会が運営する、低所得世帯向けの貸付制度です。
- 介護サービス費の貸付
- 連帯保証人がいれば無利子
- いなくても年利1.5%
自治体の独自支援
市区町村ごとに、介護家庭への独自支援があります。
- おむつ代助成
- 紙おむつ支給
- 介護用品支給(月数千円分)
- 介護慰労金
「(市区町村名) 介護 支援」で検索すれば見つかります。
生活保護
最終手段ですが、親の収入・資産が一定以下なら申請可能です。
- 介護扶助で介護費用は全額カバー
- 子世代の収入は原則関係ない(扶養照会はあるが強制ではない)
恥じることではありません。
親の生活を守るための制度なので、ためらわずに福祉事務所に相談してください。
家族信託で資産管理を整理する
親が認知症になると、銀行口座が凍結されて引き出せなくなるリスクがあります。
そうなる前に「家族信託」で資産管理を子世代に移しておくと、介護費用の支払いがスムーズになります。
家族信託のメリット
- 親の口座が凍結されても、信託された口座は使える
- 介護費用、施設入居費を子世代が管理できる
- 遺言代わりにもなる
- 認知症リスクへの事前対策
注意点
- 設定費用: 30〜100万円(司法書士・税理士に依頼)
- 親が元気なうちにしか組めない(認知症発症後は不可)
- 家族間の合意が必要
「親はまだ元気だから」と先延ばしにすると、組めなくなります。
親が70代に入ったら、家族信託の検討を始めるのが理想的なタイミングです。
家族信託の専門家に相談して、自分の家族に合う形を設計してもらうのが確実です。
介護費用シミュレーションの考え方
「うちの場合、いくらかかるか」を計算しておくと、不安が減ります。
シミュレーションの手順
- 親の要介護度を想定(現状+1段階で見る)
- 在宅か施設かを仮決め
- 月額費用 × 想定期間(5年で計算)
- 親の年金月額を引く
- 不足分が「家族負担」
計算例: 要介護3、在宅、母親の場合
- 月額費用: 7万円 × 60ヶ月 = 420万円
- 親の年金: 月10万円
- 介護サービス自己負担分: 月3万円
- 不足分(おむつ・食費等): 月2万円
- 5年の家族負担: 約120万円
計算例: 要介護4、有料老人ホーム、父親の場合
- 月額費用: 20万円 × 60ヶ月 = 1,200万円
- 親の年金: 月15万円
- 不足分: 月5万円
- 5年の家族負担: 約300万円
数字を出すと、漠然とした不安が「具体的な準備課題」に変わります。
親の貯金、年金、家族の貯金を合わせて、何年もつかの計算が大事です。
介護施設選びは情報収集から
施設介護を視野に入れるなら、早めの情報収集が肝心です。
- 希望エリアの施設一覧
- 月額費用・入居一時金の比較
- 入所待ち期間の確認
- 見学予約
介護施設検索サービスを使えば、エリア・予算・タイプで一括比較できます。
複数施設を比較することで、相場感が掴め、後悔のない選択につながります。
まとめ
介護費用で押さえたいポイント:
- 全国平均: 在宅月4.8万円、施設月12.2万円、総額約580万円
- 要介護度で費用は段階的に増える(要介護5は月8〜12万円)
- 在宅が安いとは限らない(家族の機会損失含めて比較)
- 高額介護サービス費・医療費控除など公的制度をフル活用
- 家族信託は親が元気なうちに準備
- 早めの情報収集が選択肢を広げる
介護費用は「想像より高い」のが現実です。
それでも、公的制度の活用と早めの情報収集で、家族の負担はかなり減らせます。
親の貯金・年金と家族の予算を確認し、要介護度別のシミュレーションを家族で共有することから始めてください。
施設情報の比較と、家族信託など事前準備の専門家相談を並行して進めるのが、後悔のない介護準備につながります。
