「実家にまだ住宅ローンが残っているか、親に聞きにくい」
「抵当権が付いていると、売却できないと聞いた」
「そもそも抵当権って、どこで確認すればいい?」
実家の処分や相続を考え始めたとき、必ずぶつかるのが「抵当権の確認」です。
抵当権が残ったままだと、売却・贈与・建替えがスムーズに進みません。早めに確認しておくことが、後の選択肢を広げます。
この記事では、親名義の家の抵当権を確認する3つの方法と、抵当権が残っていた場合の対応を整理します。
この記事でわかること
- 抵当権とは何か・残っているとどうなるか
- 抵当権を確認する3つの方法
- 登記簿謄本(登記事項証明書)の取り方と読み方
- 抵当権抹消手続きの流れ
- 親に話を切り出すときの伝え方
抵当権とは何か
抵当権とは、住宅ローンなどを借りるときに、家や土地を担保にする権利のことです。
お金を貸した側(銀行など)が、もし返済が滞った場合に、その家や土地を差し押さえて売却し、貸したお金を回収できるようにしています。
抵当権が残っているとどうなるか
- 売却するときに、買い手側が嫌がる(原則、抹消してからでないと売れない)
- 相続したときに、ローン残債も一緒に引き継ぐことになる
- 建替え・リフォーム時のローンが組みづらい
- 担保価値が下がるため、新たな借入が難しい
逆に言えば、抵当権が完全に抹消されていれば、これらの問題は発生しません。
「ローンを完済した = 抵当権が消える」ではない
ここが落とし穴です。
住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的には消えません。法務局で「抵当権抹消登記」という手続きをして、初めて登記簿から消えます。
「親はとっくに完済したと言っているのに、登記簿には抵当権が残ったまま」というケースは珍しくありません。
完済後に抹消手続きを忘れている家庭は、想像以上に多いです。
確認方法1: 登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する
最も確実な方法です。
法務局で「登記事項証明書」(旧称: 登記簿謄本)を取れば、抵当権の有無が一目で分かります。
取得の3つのルート
ルートA: 法務局の窓口
- 最寄りの法務局に行く(全国どこの法務局でも、全国どの物件も取れる)
- 物件の住所・地番・家屋番号で申請
- 手数料: 1通600円
- 待ち時間: 数分〜30分
ルートB: 郵送
- 法務局のサイトから申請書をダウンロード
- 物件情報を書いて、収入印紙を貼って送付
- 手数料: 1通600円
- 到着まで: 1週間程度
ルートC: オンライン(登記情報提供サービス)
- 「登記情報提供サービス」で検索
- 利用者登録(個人なら数日で完了)
- パソコンから請求してPDFで取得
- 手数料: 1通331円(2026年5月時点)
- 取得まで: 即時
「とりあえず内容だけ見たい」なら、オンラインのルートCが最も早くて安いです。
ただし、法的証明力のある正式な書類が必要な場合は、ルートA・Bで取得する必要があります。
物件情報が分からない場合
「親の家の住所は知っているが、地番・家屋番号が分からない」というケースは多いです。
- 法務局窓口で「住所しか分からないんですが」と相談すれば、地番検索を案内してくれる
- 法務局のサイト「地番検索サービス」で住所→地番の対応表が見られる
- 固定資産税納税通知書に地番・家屋番号が記載されている
最も確実なのは、親の家にある固定資産税納税通知書を見せてもらうことです。
確認方法2: 固定資産税納税通知書を見る
毎年4〜6月ごろに、市区町村から親宛に届く書類です。
確認できること
- 土地・建物の所在地・地番・家屋番号
- 固定資産税評価額
- 名義人(共有の場合は持分も)
- 課税対象の物件一覧
注意点
固定資産税納税通知書には、抵当権の有無は記載されていません。
ここで分かるのは「物件情報」と「名義人」だけです。
ただし、登記事項証明書を取るための「地番・家屋番号」が分かるので、確認方法1につなぐためのステップとして必須です。
確認方法3: 親に直接聞く・通帳を確認する
最も時間がかからない方法ですが、聞き方には配慮が必要です。
親に聞く時の質問
- 「住宅ローンは完済している?」
- 「完済後に法務局で抹消手続きはした?」
- 「銀行から『抹消書類』が届いていたら見せてほしい」
確認すべき書類
完済直後に、銀行から以下の書類が送られてきています。これが残っていれば、抹消手続きが終わっていない可能性が高いです。
- 弁済証書・抵当権解除証書
- 登記済証(登記識別情報通知)
- 委任状
「書類が見当たらない」「捨てたかも」という場合でも、銀行に連絡すれば再発行できます(再発行に時間と手数料がかかる)。
通帳でローン完済の有無を確認
親の銀行通帳・引き落とし履歴を見ると、住宅ローンの引き落としがあったかどうか分かります。
「最近5年間で住宅ローンの引き落としが一切ない」なら、完済済みの可能性が高いです。
ただし、通帳だけでは「抵当権抹消が済んでいるか」までは分かりません。最終的には登記事項証明書での確認が必要です。
登記事項証明書の読み方
取得した書類の見方を整理します。
構成
- 表題部: 物件の所在地・面積・構造など
- 権利部(甲区): 所有権に関する事項(所有者・売買履歴)
- 権利部(乙区): 所有権以外の権利(抵当権・賃借権など)
抵当権の有無は、乙区を見れば分かります。
乙区の読み方
抵当権が設定されている場合の例:
順位番号 1
登記の目的: 抵当権設定
原因: 平成XX年X月X日 金銭消費貸借同日設定
債権額: 金3,000万円
利息: 年X.X%
抵当権者: 株式会社 ○○銀行
抵当権が抹消されている場合の例:
順位番号 1
登記の目的: 抵当権設定
(下線あり = 抹消済み)
順位番号 2
登記の目的: 1番抵当権抹消
原因: 平成XX年X月X日 弁済
下線が引かれている項目は抹消済み。抹消登記が完了していれば、現在は抵当権が付いていない状態です。
「乙区に記載なし」の場合
抵当権が一度も設定されていない、または抹消後に再構築された場合は「乙区に記載なし」になります。
この場合は、抵当権の心配は不要です。
抵当権が残っていた場合の対応
完済しているのに抵当権が残っているなら、抹消登記をすれば終わりです。
抹消登記の手続き
ステップ1: 必要書類を揃える
銀行から渡された以下を準備:
– 弁済証書・抵当権解除証書
– 登記済証(登記識別情報通知)
– 委任状(銀行から発行されている)
– 銀行の資格証明書(発行から3ヶ月以内)
ステップ2: 法務局で手続き
- 抵当権抹消登記申請書を作成
- 上記書類とともに提出
- 登録免許税: 不動産1個につき1,000円(土地+建物なら2,000円)
- 手続き完了まで: 1〜2週間
ステップ3: 完了後の確認
- 登記完了証を受け取る
- 念のため、再度登記事項証明書を取って抹消されているか確認
自分でやるか、司法書士に依頼するか
| 比較項目 | 自分でやる | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| 費用 | 登録免許税のみ(1,000〜2,000円) | 1〜3万円+登録免許税 |
| 時間 | 平日に法務局へ行く必要 | 書類を郵送するだけ |
| 難易度 | 申請書作成に手間取る可能性 | 全部任せられる |
書類が完備していれば、自分でも十分できます。
ただし「書類を一部紛失している」「銀行が合併で名称変更している」など、変則ケースは司法書士に頼んだ方が確実です。
ローンがまだ残っている場合
- まずは親が支払い続けるか、家族で支援するか
- リバースモーゲージ(家を担保に老後資金を借りる)の検討
- 任意売却(ローン残債のまま売却し、売却額から返済)
- 競売は最後の手段(市場価格の50〜70%でしか売れない)
ローン残債がある場合の対応は、複雑になります。まず銀行・司法書士・FPに相談するのが最短です。
親に話を切り出すときの伝え方
「抵当権を確認したい」と親に言うと、嫌な顔をされることがあります。
「家を奪う気か」「まだ死んでないぞ」と取られやすい話題です。
切り出し方の例
- 「家のメンテナンス計画を立てたいから、登記の状態を見せてほしい」
- 「相続のときに困らないように、今から書類を揃えておきたい」
- 「火災保険の更新で必要だから、固定資産税の通知書を見せて」
直接「抵当権が」と言うより、別の文脈から入る方がスムーズなことが多いです。
親が拒否した場合
- 共有名義であれば、自分の持分から登記事項証明書を取れる
- 完全に親名義の場合、第三者でも法務局で証明書は取得可能(物件情報があれば)
実は、登記事項証明書は誰でも取得できる公開情報です。親の同意がなくても、住所・地番が分かれば取れます。
ただし、家族関係を悪化させない配慮は別問題。可能なら親の同意を得てから動くのが理想です。
まとめ
親名義の家の抵当権を確認する流れ:
- 抵当権は「完済しただけでは消えない」、抹消登記が必要
- 確認方法は「登記事項証明書」「固定資産税納税通知書」「親への確認」の3つ
- 登記事項証明書はオンラインで331円・即時取得可能
- 乙区の「下線」が抹消済みのサイン
- 抹消されていなければ、抵当権抹消登記を1〜2週間で完了できる
- 親に話すときは「相続準備」「家のメンテ計画」など別文脈から
抵当権が残っていることに気づかないまま相続に入ると、思わぬ手続きの遅延につながります。
まず一度、オンラインで登記事項証明書を取って現状を確認するところから始めてください。
複雑なケース(銀行が合併済み・書類紛失など)は、司法書士に相談するのが最短です。
